DeepSeek V4 Pro正式版レビュー:性能、API料金、コスト分析
DeepSeek V4 Pro正式版を公式資料で検証し、Agentベンチマーク、1Mコンテキスト、API互換性、現行料金と時間帯料金、コスト試算、Modelflareでの提供状況を解説します。
DeepSeekは2026年8月13日にDeepSeek-V4-Pro GAを正式リリースしました。ホスト版APIのバージョン表記はDeepSeek-V4-Pro-0813となり、安定版のAPIモデルIDは引き続きdeepseek-v4-proです。100万トークンのコンテキストウィンドウ、最大384,000出力トークン、Responses APIのネイティブ対応、リリース直後に始まる新しい料金体系が主な特徴です。
結論から言えば、V4 Proは難しいコーディング、リポジトリ規模の作業、長時間稼働するAgentについて本番評価を行う価値があります。DeepSeekの公表値では、難度の高いAgentベンチマークでV4 Flashを一貫して上回ります。ただし、すべてのリクエストでProが経済的な既定値になるわけではありません。新料金の開始後、公式の入力・出力料金はFlashのおよそ3倍となり、アカウントあたりの同時実行上限は5分の1です。
本稿では、現在のAPI仕様、DeepSeekが公表したベンチマーク結果、当社の分析、Modelflareでの現在の提供状況を明確に区別します。DeepSeekのスコアを当社が独自に再現したものではありません。変動し得る仕様と料金は2026年8月14日に確認しました。
DeepSeek V4 Pro GAの概要
| 項目 | 現在の公式情報 |
|---|---|
| GA公開日 | 2026年8月13日 |
| 安定版APIモデルID | deepseek-v4-pro |
| ホスト版モデル | DeepSeek-V4-Pro-0813 |
| コンテキストウィンドウ | 1,000,000トークン |
| 最大出力 | 384,000トークン |
| Thinkingモード | 対応、既定で有効 |
| Reasoning effort | GA発表:low、high、max。下記の互換性に関する注意を参照 |
| 公式API形式 | Chat Completions、Responses API、Anthropic Messages互換API |
| 文書化された機能 | JSON出力、Tool call、自動コンテキストキャッシュ、prefix completion、非Thinking時のFIM |
| 公式のアカウント同時実行数 | 500同時リクエスト |
100万トークンは容量の上限であり、品質の保証ではありません。検索精度、レイテンシ、キャッシュ再利用、出力長、クライアントのタイムアウト、不要なコンテキスト量によって、長いリクエストが実際に有用かどうかは変わります。
V4プレビューから変わった点
4月のプレビューではV4ファミリーとオープンウェイトのアーキテクチャが公開されました。8月のGAはホスト製品の更新で、実務上の変更は主に3点です。
- DeepSeekは、特に本番に近いコーディングと自動化タスクでAgent性能が大幅に向上したと説明しています。
- 公式APIがOpenAI Responses形式にネイティブ対応し、Codex向け互換性も含まれました。
- 2026年8月16日16:00 UTCから、APIにピーク・オフピーク料金が導入されます。
安定したリクエストモデル名はdeepseek-v4-proのままなので、既存クライアントでモデル名を移行する必要はありません。料金ページに表示される現在のホスト版はDeepSeek-V4-Pro-0813です。
ダウンロード可能なプレビューのcheckpointが、ホスト版GAとビット単位で同一だと決めつけないでください。DeepSeekの公開V4モデルカードは現在もプレビューファミリーを説明しており、checkpointを0813とは表記していません。セルフホスト版と公式API版は別々に評価する必要があります。
ベンチマーク評価:ProがFlashを上回る領域
DeepSeekはV4 Pro GAについて次の結果を公開しました。比較列はDeepSeekの7月31日版V4 Flashの値を使い、差分はスコアの絶対差です。
| ベンチマーク | V4 Pro GA | V4 Flash 0731 | Proの差分 |
|---|---|---|---|
| Terminal Bench 2.1 | 87.9 | 82.7 | +5.2 |
| NL2Repo | 61.5 | 54.2 | +7.3 |
| Cybergym | 83.3 | 76.7 | +6.6 |
| DeepSWE | 62.7 | 54.4 | +8.3 |
| Toolathlon-Verified | 74.1 | 70.3 | +3.8 |
| Agents' Last Exam | 25.7 | 25.2 | +0.5 |
| AutomationBench (Public) | 31.8 | 25.1 | +6.7 |
| DSBench-FullStack | 71.1 | 68.7 | +2.4 |
| DSBench-Hard | 67.2 | 59.6 | +7.6 |
DeepSeekはV4 Pro GAのHLEについて、Toolなし42.7、Toolあり60.0とも報告しています。
単独の目立つスコアよりも、全体の傾向が重要です。最大の絶対的な伸びは、リポジトリ作業、難しいソフトウェアエンジニアリング、自動化に現れています。Agents' Last Examの差は小さく、幅広いTool利用では中程度です。この結果はルーティング戦略を支持します。完了確率の向上がトークン効率より重要なタスクにProを使い、大量の分類、要約、トリアージ、単純なサブAgentにはFlashを使う方法です。
これらはプロバイダー公表値であり、Modelflareによる独立ベンチマークではありません。ハーネス、Tool権限、reasoning effort、サンプリング設定、時間制限、採点方法によってAgentの結果は大きく変わります。本番判断では、プライバシーに配慮した同一タスクを両モデルで再生し、トークン数や順位だけでなく、成功タスクあたりのコストを測るべきです。
アーキテクチャと1Mコンテキストの意味
DeepSeekの公開V4モデルカードは、Proファミリーを総パラメータ1.6兆、活性化パラメータ490億のMixture-of-Expertsモデルと説明しています。Compressed Sparse AttentionとHeavily Compressed Attentionを組み合わせたハイブリッドAttention、Manifold-Constrained Hyper-Connections、Muonオプティマイザー、32兆トークン超での事前学習も記載されています。
DeepSeekによると、1MトークンのコンテキストでV4 Proが使う単一トークン推論FLOPsはV3.2の27%、KVキャッシュは10%です。これはモデル公開元によるアーキテクチャ上の主張であり、100万トークンのリクエストが高速・低価格、またはすべての位置で同じ精度になることを意味しません。
実際の長文コンテキスト運用では、次を確認してください。
- prefix cacheを利用できるよう、安定した指示と再利用可能なリポジトリ情報を先頭に置く。
- キャッシュヒットを仮定せず、
prompt_cache_hit_tokensとprompt_cache_miss_tokensを記録する。 - 古いTool traceや重複ファイルがコンテキスト予算を使う前に圧縮する。
- アプリが実際に使う文書深度とトークン位置で検索をテストする。
- 入力でウィンドウ全体を埋めず、推論、Tool結果、最終回答の余地を残す。
DeepSeekのディスクキャッシュは自動かつbest effortです。再利用可能なprefixを照合し、構築に数秒かかる場合があり、通常は非アクティブになってから数時間〜数日で消去されます。繰り返しリクエストでも先頭付近が変われば、経済的な利点の大半を失う可能性があります。
API互換性:ネイティブ対応は同一仕様を意味しない
| インターフェース | DeepSeek公式対応 | 重要な境界 |
|---|---|---|
| Chat Completions | 対応 | ThinkingとToolのループではreasoning_contentを保持する必要がある |
| Responses API | 対応 | ステートレス。複数のOpenAIフィールドは無視または非対応 |
| Anthropic互換API | 対応 | 一部フィールドは無視。画像・文書コンテンツは非対応 |
| FIM completion | ベータ | 非Thinkingモードかつベータendpointのみ |
公式Responses層はテキスト、function call、サーバー側Web検索、Codex互換用のカスタムTool apply_patchに対応します。一方で、previous_response_id、conversation、保存されたresponse、backgroundモード、service_tier、OpenAI管理のprompt cache keyには対応しません。未対応フィールドは通知なしに無視されることが多いため、HTTP 200だけでは意味上の互換性を証明できません。Responsesクライアントは履歴を自ら保持し、Chat Completions型の[DONE]を待つのではなくイベント種別を確認する必要があります。
Chat CompletionsのToolループにも重要な境界があります。ThinkingモードとToolを併用する場合、Assistantのreasoning_contentを後続リクエストに戻さなければなりません。このフィールドを失うと400エラーになることがDeepSeekの文書に記載されています。GatewayやSDK adapterは、単一のテキストpromptではなく、完全な複数ターンのToolループで検証してください。
GA発表ではlow、high、maxのreasoning effortが利用可能とされています。しかし、現在の詳細なThinkingガイドとAPIリファレンスでは、有効な値はhighとmaxで、lowとmediumはhighへ、xhighはmaxへマッピングされると記載されています。DeepSeekが文書を揃えるか、ライブテストでlow固有の動作を確認するまでは、lowによるコスト削減を前提に予算を組まないでください。
DeepSeek公式API料金:現行と今後
以下はすべて100万トークンあたりの米ドル料金です。現行の固定料金は、新料金が2026年8月16日16:00 UTC、北京時間では8月17日00:00に始まるまで掲載されています。
| 料金期間 | キャッシュヒット入力 | キャッシュミス入力 | 出力 |
|---|---|---|---|
| 8月14日に確認した現行料金 | $0.003625 | $0.435 | $0.87 |
| 新オフピーク料金 | $0.022 | $0.66 | $1.98 |
| 新ピーク料金 | $0.044 | $1.32 | $3.96 |
新料金では01:00〜04:00 UTCと06:00〜10:00 UTCがピーク時間です。それ以外はオフピークで、オフピーク料金はピーク料金の半額です。
今回の移行は、現行料金を単純に時間帯で2倍に分けるものではありません。現行の固定料金と比べ、新オフピークはキャッシュ入力で約6.07倍、非キャッシュ入力で1.52倍、出力で2.28倍になります。ピーク料金はその新オフピーク値の2倍です。キャッシュ再利用の価値は残りますが、ローンチ期の例外的に低いキャッシュ入力料金が最も大きく変わります。
コスト計算例
トークン料金だけの計算式は次のとおりです。
コスト = cache_hit_tokens × cache_hit_rate + cache_miss_tokens × cache_miss_rate + output_tokens × output_rate
以下の例には、ネットワーク、サブスクリプション、Toolサービス、決済などの別料金は含めていません。Toolを使うAgentは複数回モデルを呼び出すため、最初のリクエストだけでなくタスク全体を計算してください。
| ワークロード | DeepSeek現行 | 新オフピーク | 新ピーク | Modelflare 8月14日時点 |
|---|---|---|---|---|
| 非キャッシュ入力100K + 出力10K | $0.0522 | $0.0858 | $0.1716 | $0.0540 |
| キャッシュ90K + 非キャッシュ入力10K + 出力10K | $0.0134 | $0.0284 | $0.0568 | $0.0138 |
| キャッシュ900K + 非キャッシュ入力100K + 出力20K | $0.0642 | $0.1254 | $0.2508 | $0.0663 |
2行目と3行目はprompt構造の重要性を示します。大きく安定したprefixはコストを大幅に削減できますが、実際にキャッシュヒットした後に限ります。照合時の正しい根拠はAPIのusageフィールドです。
DeepSeek V4 ProとV4 Flash:価格性能の選び方
現行の公式料金では、Proは非キャッシュ入力と出力でFlashの約3.11倍、キャッシュ入力では1.29倍です。新料金開始後は非キャッシュ入力と出力で3倍、キャッシュ入力で約3.14倍になります。公式のアカウント同時実行数はProが500、Flashが2,500です。
ここから明確な運用方針が導けます。
- 難しいリポジトリ変更、長期Agent、セキュリティ分析、複雑なTool連携、失敗コストが高いタスクにはV4 Proを使う。
- 単純なAgent、並列worker、前処理、抽出、要約、throughput重視のトラフィックにはV4 Flashを使う。
- Proを万能な既定値にせず、観測したタスク難度と成功タスクあたりのコストでルーティングする。
- 価格改定後は、キャッシュを使うProワークロードの経済性が大きく変わるため再評価する。
Proが再試行や人手修正を避けられるなら、3倍のトークン単価でも最終的に安くなる場合があります。逆に、ベンチマークで5ポイント高いだけでは、決定的または単純な作業を大きなモデルへ送る理由になりません。完了率、所要時間、再試行を含む全トークン、Tool失敗、レビュー修正時間を測定してください。
ModelflareでのDeepSeek V4 Pro料金と提供状況
Modelflareのライブ料金カタログを2026年8月14日に確認しました。deepseek-stableグループにdeepseek-v4-proと固定alias deepseek-v4-pro-0813が掲載され、100万トークンあたりの基本料金は次のとおりです。
| Modelflare料金スナップショット | 料金 |
|---|---|
| キャッシュヒット入力 | $0.0037 |
| キャッシュミス入力 | $0.45 |
| 出力 | $0.90 |
この時点の料金は、DeepSeekの現行キャッシュ入力料金より約2.07%、非キャッシュ入力と出力料金より3.45%高い値です。本稿では、DeepSeekのピーク・オフピーク移行後もModelflare料金が同じだとは約束しません。本番判断には必ずライブ料金ページとリクエストのusage記録を使ってください。
現在の公開カタログmetadataでは、ModelflareのルートはOpenAI互換Chat Completionsとして表示されています。DeepSeek自身のendpointがResponsesとAnthropic形式に対応していても、すべてのGatewayルートが自動的に対応するわけではありません。ライブ料金ページに示された正確なprotocolを利用してください。
export MODELFLARE_API_KEY="your-api-key"
curl https://modelflare.dev/v1/chat/completions \
-H "Authorization: Bearer ${MODELFLARE_API_KEY}" \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{
"model": "deepseek-v4-pro",
"messages": [
{"role": "user", "content": "Review this migration plan and identify rollback risks."}
],
"thinking": {"type": "enabled"},
"reasoning_effort": "high"
}'
一般的なクライアント設定はOpenAI互換APIガイドを参照してください。会計とキャッシュトークンの読み方はAI APIコスト追跡で解説しています。
本番評価チェックリスト
- ルートで提供される場合、評価中は
deepseek-v4-pro-0813を固定し、その後で安定aliasが変更管理に適しているか判断する。 - プライバシーに配慮した固定タスクセットを、同じTool、権限、timeout、停止条件でProとFlashの両方に再生する。
highとmaxをテストする。現行APIで別の挙動が確認できるまでは、lowをhigh相当として扱う。- 複数ターンのToolループを完了させ、
reasoning_content、Tool ID、引数、結果がすべてのadapterを通過することを確認する。 - Responsesクライアントでは、未対応parameterが通知なしに無視され得るため、必要なフィールドを個別にテストする。
- キャッシュ入力、非キャッシュ入力、出力、推論トークン、レイテンシ、再試行、成功タスクあたりのコストを記録する。
- 現実的な深度で長いpromptをテストし、短いリクエストから100万トークンでの検索品質を推測しない。
- アカウント同時実行上限より低い負荷でテストし、429には上限付きbackoffで対応する。
- 予算承認前に、現行料金と8月16日/17日からのピーク・オフピーク料金の両方を試算する。
- 可用性とコスト制御のためFlashまたは別モデルのfallbackを残す。信頼性の高いAI APIルーティングも参照してください。
最終評価
DeepSeek V4 Pro GAは、単にプレビューの名前を変えたものではなく、Agent重視の意味あるリリースです。公式スコアはリポジトリ推論、難しいコーディング、自動化で特に強く、新しいResponsesインターフェースによって現代的なコーディングAgentで使いやすくなりました。1Mコンテキストと自動キャッシュは有用ですが、アプリが安定したprefixを維持し、実際のキャッシュヒットを確認する場合に限ります。
最大の注意点はコストです。リリース後のProは多くのトークン区分でFlashのおよそ3倍であり、同時実行数も少なくなります。すべてのpromptの既定値ではなく、難しく価値の高い作業のエスカレーション層として使うべきです。通常は単純な作業をFlashへ送り、難しいタスクや失敗したタスクだけProへ昇格させる構成が合理的です。
Modelflareの8月14日時点の料金はDeepSeekの現行固定料金に近く、現在はV4 ProをChat Completionsで提供しています。DeepSeekの新料金開始後はライブページを再確認してください。古い記事やキャッシュされた料金画像を請求の正しい根拠にしてはいけません。
情報源と確認日
- DeepSeek:V4 Pro GAリリース
- DeepSeek APIのモデルと料金
- DeepSeek API更新履歴
- DeepSeek Thinkingモード
- DeepSeek Responses API互換性
- DeepSeek Anthropic API互換性
- DeepSeekコンテキストキャッシュ
- DeepSeekレート制限と分離
- DeepSeek V4 Proモデルカードとオープンウェイト
公式仕様、料金スケジュール、Modelflareでの提供状況、ライブ料金は2026年8月14日に確認しました。